心臓の左心室

道路は国が整備する公共の資産ですから、言われなくても定期的にメンテナンスがされています。それでも、時に道路整備の不手際が原因と思われる事故や問題が起きるのです。これが家の水道となると、私的なものですから「なにかあっても困るのは自分と家族だけ」というわけで、つい手入れが行き届かなくなります。確かに水道管はいくらでも直すことができます。しかし水道なくして、私たちの生活が成り立つでしょうか。もしも永遠に壊れてしまつたら……どうなるかは想像におまかせしましょう。そうです、私たちの体の血管にも、まったく同じことがいえるのです。今では健康診断によって血管を調べることは重要な項目となっています。しかし、健康診断を受けなければ、あなたの血管でなにが起きているのか、誰にもわからないのです。ご存知のように、血管には静脈と動脈があります。

 

 

心臓の左心室から出発して大動脈を通って指先や足先などの末梢部で毛細血管に枝分かれするのが動脈です。動脈は全身に酸素と栄養を補給しています。この逆に、毛細血管から老廃物を受け取り、心臓に戻るのが静脈です。心臓に戻る太い静脈を大静脈といいます健康診断と聞いて最初に思い浮かべられるのが、脈を調べることですね。私たち医師は聴診器を使って患者さんの脈を「聴き取り」しています。脈の聴診は実に大事で、さまざまなことを医師に教えてくれます。十分に訓練された医師であれば、脈をとるだけでさまざまな病気の存在を確認することができるほどなのです。

 

脈とは、すなわち心臓の鼓動と対応する血液の流れです。聴診器で聴こえるのは脈だけではなく呼吸器やその他の器官の音もあるのですが、ここではまず、脈の話に限定しましょう。脈を聴診器で音として聴くのですが、音は「波」であることを皆さんもご存知でしょう。全身の脈を「聴く」と、その音がそれぞれの場所によって少しずつ違うことがすぐにわかります。なぜかというと、細い血管、太い血管、詰まった血管、よく通る血管など、さまざまな血管の状況(生理的変化)によつて、音の波にも違いが出るからです。医師であれば、聴診器で脈を調べるだけで動脈硬化に「気付くこと」は当然でしょうね。